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十一世紀半ばの『新猿楽記

十一世紀半ばの『新猿楽記』には、夫にうとまれた本妻が滑稽に描かれている。彼女は六十歳。“紅顔漸く衰へたり”(美貌もそろそろ衰えた)というから、若いころは美人だったのだろう。しかし夫は彼女より二十も年下の四十歳。若いころは妻の両親の権力と財力に心を奪われていたが、今は妻が年上すぎるのを悔やんでいる。妻の容貌といえば、髪は朝霜のよう。シワは畳み重なって暮れにうち寄せる波のよう。上下の歯は欠け落ちて“飼猿”のよう。乳は垂れ下がって“夏牛の悶”(夏の牛の陰嚢)に似ていた。が、「彼女は我が身の老衰を知らずに、常に夫の愛情がなおざりなことを恨んでいた」そして夫の愛を取り戻すために、男女和合の神とされる歓喜天を拝み、道祖神を祭り、男を得るための“男祭”には“鮑苦保”をたたいて踊り、稲荷山に祭られたキツネの“愛法”では“鰹破前”を上に反らせてありがたがっていた。“鮑苦保”と“鰹破前”はそれぞれ女陰と男根状のものを意味するのだろう。
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