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目の下の「くま、たるみ」の具体的治療をめぐって

目の下の「くま」を治療するには前述したように、目の下の過剰脂肪を取り除けばよい。その取り方はさまざまあるが、従来では下腱毛から1〜2ミリのところで皮膚を横切開して脂肪を取る方法が一般的だった。私がかつて働いていた美容外科クリニックでも、この方法を用いて治療を行っていた。しかし、この方法には皮膚の上から切開することで大切な顔に傷をつける恐れがある。熟練した美容外科医が行えば、この傷跡は数ヶ月後には消えてしまうが、完全治癒するまでの数ヶ月間、傷口は赤く腫れ上がり、縫合糸が付いているので眼鏡かサングラスをかけなければ人前に出られない。特に治療後一週間は腫れが明らかだ。この治療法にはもう一つ、欠点がある。切開で脂肪や目の下の皮膚の切除量を間違えると、いわゆる「あかんべ1の状態」になる危険があることだ。そのため、患者さんには十分説明し、納得してもらった上で治療を行う必要があった。私はこの治療法をずいぶん行ってきたが、この「あかんべ1状態」になることだけはないように、常に細心の注意を払い、強いストレスを覚えたものだ。では、どのように治療を行えば目の下の治療は、安全で有効な結果が得られるのか?悩んだあげくの結論は、「美容外科の鉄則に基づいて、人目にはふれないところを切開する」ということだった。日本の美容外科の歴史は少なくとも70年近くある。この間に、鼻を高くしたり、目を二重にしたり、あごを前に出したりと、さまざまな技法と処置が開発されたが、一般に広まり完成された手法は、すべて人目につかないところを切開するというものだった。目の下のくま治療では、目の裏から切開して脂肪を取り出す方法が従来から存在していた。しかし、どうしたわけか、その方法はあまり一般に広まらなかった。クリニックの先輩から指導を受けてこの方法の実際を試みてみたが、表面から切開を加える治療よりは明らかによさそうなのだ。結局、この方法は、下瞼をひっくり返しながら治療するため操作が複雑なこと、さらに取り除く脂肪量を調節するのが困難という理由から、各クリニックでは採用されなかったということに気づいた。これらの欠点を何とか解決する方法はないものだろうか?私の頭の中は安全で効果的な最新治療のことでいっぱいになっていた。あるとき私は、脂肪吸引の研修にポルトガルのリスボンを訪れた。お会いした先生の専門は体幹部の脂肪吸引だったが、ちょうどそのとき、顔の治療を希望する患者さんが来ていた。どのような方法をとるのか。注視していると、先生は目の下のくま、たるみ治療に何と皮膚の上から3ミリくらいの小さな穴を開けて脂肪を抜き取る治療を行ったのだ。白人の場合、傷跡が目立たない体質があるので、皮膚の上に3ミリの穴を開けることも悪くないのかもしれない。しかし、白人に比べて皮膚が厚く、傷が目立ちやすい東洋人にはこれは不向きな方法ではないだろうか。脂肪を取ったあとの皮膚のたるみはどうするのか、先生に次のように尋ねてみた。「脂肪をとったあとの余った皮膚はどうするのですか?」「それは大丈夫。皮膚は脂肪が減った分くらいであればすぐに縮んできれいになりますよ」と先生は答えた。過去の症例をみせてもらうと、たしかに皮膚のたるみはそれほど目立たず、きれいになっていた。このことをきっかけとして、「皮膚を切らずに目の下のくま、たるみを治してみよう」という意欲が湧いてきた。考えてみると、皮膚切開法でも、皮膚を切り取る量は微々たるものだ。もしかすると、切り取らなくてもあまり差が出ないのではないか。それからは症例は少なかったものの、目の裏から脂肪のみを取り出す場合と余った皮膚を切って脂肪を取り出す方法を比べてみると、確かに東洋人の場合でもそれほど差がないことが判明した。